第9話
火を起こすのには当然薪が要る。しかし、魔道士ならば何も無いところから火を起こせる。
そういうわけで夜の番に魔道士が焚き火を管理することも多い。今夜は三交代。最初がティルとフォグ。次がレン一人。最後に俺とリーリアだ。
ティルとレンとリーリアが分かれたのはいいとして、何で俺がリーリアと一緒に見張りをしているか。
このアマが『私、リル様と一緒がいいです♪』などと抜かしたからだ。
「……久しぶりです。こういうの」
魔力で生んだ炎に照らされながら、リーリアが呟く。
「昔は、お母様がしてくれてたんですよ」
「……俺の両親は、俺がガキの頃に死んだからな」
「あら、ごめんなさい」
「いいんだよ。その代わり育ての親はいるしな。いい親だよ。
……あんたはどうだったんだ? 皇帝が迎えに来て」
俺が問うと、リーリアは苦笑を浮かべて、
「最初はお父様のお名前も知らなかったんです。母も教えてくれなくて……。
初めて会ったのは、母のお葬式が終わって最寄の町の孤児院で二週間ほど過ごした頃でした。立派な馬車が来て、私が一人で乗るように言われて……乗ったら、中でお父様が待っていたんです。
『リーリア、私だよ。すまなかったね』って言われて……何のことか分からなくて。
私がお父様が誰か知らないと知ったときは、驚かれていました」
そこで、くすりと笑い、
「私、行かないって言ったんですよ。そしたらお父様、どうしたと思います?
毎日毎日、孤児院の前に馬車を持ってきて……その中で、『悪いようにはしないから』って繰り返して……結局、私が折れちゃいました」
「じゃあ……皇女って公表されていないのも?」
「ええ、私の希望です。
……私は馬鹿ですから。政治なんて分かりません」
「ドルメットの奴は?」
「あれは……お父様が、安心できる相手をと……。
あ、でも、私が嫌なら止めていいって仰ったんですよ。……本当に、そうしてくれましたし」
と、彼女は俺に肩を寄せてくる。
「私、リル様が好きです」
「……一体どこが気に入ったんだ?」
「恋に理由は要りません」
……分からんな。オトメゴコロってヤツは。
ともかく、そうして話すうちに夜は明けた。
歩き通して――夕方。目的の村・ゴールセットに到着した。
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