第26話
「リリア。お前にだ」
リュシオスが、手紙を渡してくる。家族からではない。
差出人はアラン・ドルセ。宛名は何と書いてあるか分からない。共通語ではないというのが、リリアに分かった精一杯だった。
「ホル・ティート・レーンと読む。神聖語だ。未婚の妻という意味で……お前のことだ」
納得した。リュシオスが王位継承権を持っている限り、彼女とは結婚できないのだ。王家の道具としての意味がなくなるのだから。
「俺が継承位を棄てるには、程度の差はあれ神殿の庇護が必要になる。お前も、俺と一緒に神殿の保護を受けることになる。そういう意味で、お前のことは神殿にも話してある。
……今度、神聖言語を教えよう。儀式に使われるしな。
ん? どうした?」
リュシオスは、硬直している彼女の脇から手紙を読み、
「ヴァセッタの奴……!」
また機嫌悪く悪態づき、彼女の手から手紙を取ると、ざっと目を通し、怒りを噛み殺した顔で、
「悪かった。これから用心する」
言いながら手紙をぐしゃぐしゃにして放り投げた。
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