第5話

「急いでるのかと思ったわ。宿以外降りないから」

 かなり大きな町だった。煉瓦造りの建物が並び、町の入り口には店が所狭しと並んでいる。

「急いでいるが?」

 さも当然というように言い、繁華街とは別の方向へ向かうリュシオス。


「じゃあ、何か用事があるの?」


「うるさい黙れ」


 ……そういえば、今日は兵士がついてないな……。

 胸中でリリアは一人呟く。正確には側役なのだが、彼女は兵士としか認識していなかった。それほど知識がないのである。


 かなり歩幅の大きいリュシオスに、苦労して合わせながら付いていく。閑静な方へ向かっていた。行き着いた先は、リリアでもかなりのものと分かる店ばかりが並ぶ場所。


「……リリア」

「何?」

「…………」

 呼んだだけのようだ。リリアが立ち止まると、店の入り口でこちらを振り返っている。


「早く来い」

 小走りに店に入る。ここら一帯殆どがそうだが、白塗りの建物の洋装店だった。念のために述べておくと、吊るし売りではない。


 リリアはリュシオスに捕まった日にかなり高そうな服を渡され、今着ているのもその一着なのだが。


 リュシオスと何やら話していた店主が彼女に寄り、巻尺を当て、

「ええ、大丈夫です」

「急いでくれ。間に合わせは宿に」

「畏まりました」


 会話は終わったようで、慣れた調子で手近なソファに座る。彼女の採寸が終わると、


「予定が詰まっている。ぐずぐずするな」

 言うなり、リリアの手を引っ張って店を出た。




◆◇◆◇◆

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