第6話

「着替えろ」

 リリアが、今まで見たことも無いような豪華な部屋――宿の一室である――に溜息をついていると、リュシオスが服を放って来る。

「……重い」

 その服の感想を正直に述べる。


「礼装だ。間に合わせだが。……ほら」

「な! ……ちょっと!」


 当然のように彼女の後ろに回りこみ、背中のボタンを外し始める始めるリュシオスに、リリアが抗議の声を上げる。


「一人では着られないぞ」

「だからって……」


「うるさい黙れ。下着は取らん」

 冷たいアイスブルーの瞳に何の感情も浮かべず、さっさと彼女を着替えさせると、歩き方や礼の仕方などをはじめ、礼儀作法を教え始める。


「……こんなの覚えてどうするの……」

「俺が知るか」

 思わず呟いたリリアに、リュシオスが言い、


「こんな形骸的なこと……いずれ放逐してやる」

「……王様になるような言い方ね」

 実際、今までのリュシオスの態度が君主のようだと思えなくも無い。


「うるさい」

 こころなしか、いつもの「うるさい」とは違うような気がしていた。




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