第37話

「スクーヴァルがいねぇ!」

 リガスの執務室に駆け込み、ケイディスは叫んでいた。


 手には――ラズガルズ。


 リガスは、ただ驚く。

「……氷王神殿から……いなくなったんですか?」

 頷く。


 ――有り得ないことだった。彼女は、ラズガルズなしではまともに転移できない。それを置いてどこかに行くことはない。


 加えて、ニーバッツも今はない。氷王神殿、ニーバッツ、ロスオイト。これら以外に、彼女が行きそうな場所はあるだろうか。


「……分かりました。ロスオイト中を探しましょう。

 貴方は、氷王神殿を」


 会話が終わるなり、二人は行動する。そして――


 ――護宮。そこに、声が響く。


「……まったく……予想外だった。まさか、こんなことで……」

「止めてください! だからと言って……!」


「クライグが限界に近いことは、分かっているだろう?」

 冷静な声。……それでいて、冷淡。


「止めてください! 彼女は何もしていません!」

 悲痛な声にも、冷淡な方が応じる様子はない。


「世界と一人の命。秤にかける気か?」

「それでも……彼女を死なせたくない」

「勝手にしろ。未覚醒なお前に何かできるなら、な」


「……――!!」

 一人残った彼は、ただ、嗚咽した。


「……ごめんなさい……ごめんなさい……」

 ただ、そう繰り返しながら。



◆◇◆◇◆

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