第28話

「スクーヴァル……スクーヴァル……」

 揺り起こす。やがて、目を覚ました。


「……ケイディス……

 ……!」


 怯えたように、目を見開く。

「………………

 ……おにい……ちゃん……」


「どこまで知ってますか? スクーヴァル」

「……ムィアイーグに……聞いたの……全部……」


「なら、早い」

 ケイディスは、結界ごとキオを床に叩きつけ、


「……謝れ」

 その直後、殺す。

 ――それを、隠しもせずに宣告する。


「…………」


 だが――

 勝手が違うこともある。ケイディスがキオの力を封じたのとは別の系統の力なら――或いは、結界を気にせずに力を奮えただろう。


 ケイディスには及びもつかない力。しかしそれは、彼女を殺すには充分だった。


 そして、光が収束し――

 がっ!


 空中から現れた槍が、それを弾いた。


 装飾性が高く、びっしりと文字らしきものが掘り込まれた槍。それを手にしていたのは、長い銀髪に黒の双眸の男。


「……お兄ちゃん……?」

 スクーヴァルに優しい微笑を向ける、彼女の兄、ステアルラその人だった。


「……な……」

 何か言うより早く。


「ここまでだ。この野郎が」

 縫製の出鱈目な裾のズボンから伸びた足が、キオを踏み付ける。


「……光王……セシトイオ……」


「ヤローはどうでもいいけどな。可愛いコを泣かせるのは容赦しねーよ」


「……どいてくれ」

 ステアルラに言われ、渋々と言うように引き下がるセシトイオ。


「……これが、俺の意思だ」

 言い、槍を突き立てる。硝子が割れるような音。


 そしてそこは、氷王神殿ではなくなった。



◆◇◆◇◆

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