第22話

「……え?」

 異変。それに気づき、戸惑った。

 周囲に光が舞っている。――いや、これは、自分の身体から溢れている。


「何……これ……」

 慌てて外に出て身体をはたくが、それで光が落ちるわけでもない。そうするうちに、


「あ! スクーヴァル!」

 金髪の男が駆け寄ってくる。


 瞬間――彼女は、本能的に察知した。

「ルセル! 逃げて!!」

 何故か。分からなかった。だが――


 ――どくん。


 変化は、確実に起こっていた。彼女の光が、強くなり、収束し始める。


 ――どくん。


「…………あ……いや……」


 ――どくん。


 彼女の意思とは関係なく、ただ強くなる光。


「いや……やだ……やめて……」


 ――どくん。


「いやあぁあぁあああぁぁあッつ!!」

 それが、自分の叫びだと気づくまでに、数秒かかった。


 自分の声で正気に返れば、すでに遅い。


 光が、辺りを凪いでいた。


 縦横無尽に迸る、幾条ものそれらは、大地を、空をただ切り裂く。そして――

 音も無く。

 結界が、消えた。


 茜に染まる空。赫く染まる大地。

 総て――呑まれてゆく。


「――ルセル!?」

 思い出して振り返るが、そこに人はいない。


 家も木も。大地すらなかった。


 あったのは――溶岩。

 赫い赫い、海。


 そこに、彼女はひとり立っていた。


 何も――ない。無くなった。


「……あ……ああ……」

 呆然と、ただ呟く。頭を押さえつけて。


「あああああっ!!」

「スクーヴァル!? どうしたんだ?」


 結界が消えたのを察知したのだろう。ケイディスだった。

「まさか……そんな……」


「わたしが……わたしが……」

 力なく呟くと、スクーヴァルは力を抜いた。

 そのまま。溶岩に堕ちて行く。


「おい! 何を……!」

 慌ててケイディスが下降し、受け止める。


「わたしなの! わたしがやったの!」

 ケイディスの腕の中で、彼女はただ叫び続けた。


 ――声の限りに。心の限りに。



◆◇◆◇◆

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