第19話
ノックの音に、顔を上げる。促すと、扉が開き――
「……ステアルラ。どうしたんです?」
執務室で、書類から目を離さずに言う。口調は冷たい。スクーヴァルが氷王神殿に引き取られてから、今日で十四日目だった。
「スクーヴァルはどこだ?」
「……今更、惜しくなったんですか?」
リガスは嘆息し、
「多分氷王神殿ですよ。会いたいなら、話をしますけど? 謝りますか?」
耐性のある者なら氷王神殿でも死なない。スクーヴァルは偶然とはいえ生き残ったため、その環境に対応できた。しかし、ステアルラはそうはいかない。
ケイディスが、彼が反省するなら彼女をロスオイトに帰してもいいと言っていたことは事実であるし、リガスはそう言った。
「……別にいい」
「ステアルラ!」
リガスが立って言うが、彼は興味なさげに退出しただけだった。しかし――
「スクーヴァルなら、ニーバッツだぜ」
開いた扉の向こうから、声がする。
「会いに行くか?」
呆れを隠しもしない、ケイディスの声。
「……いや、いい」
それにすら反応を見せず、ステアルラは去って行った。
「……何だ、ありゃあ」
疲れた声でケイディスが洩らす。リガスは、その後を追った。
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