第17話

「……一つ、はっきりさせたい事がある」


 ロスオイトに帰るなり、三人はステアルラの部屋を訪れた。(自室に戻っていたのだ。妹が消えたというのに)


「……何だ?」

「お前は、スクーヴァルの何なんだ?」

 さっぱりとした声のステアルラに、ケイディスが詰め寄る。


「兄だ。知らないわけではないだろう?」

「自覚があるかって訊いてんだ」

「自覚?」

 ステアルラは、首を傾げ、

「必要ない」


「……てめぇ……!」


「ステアルラ、本当にどうしたんですか?」

 二人を引き離したのは、リガス。そうしなければ、ケイディスは彼を殴っていただろう。


「前は、本当にスクーヴァルを大切にしていたのに……」

「ああ、大事だ。今もな」


「……だから、そうは見えねぇんだよ」


「お前たちが納得できないんなら、好きにしたらどうだ?」

 その言葉に、スクーヴァルが身体を震わせる。


「……分かった。スクーヴァルはオレが引き取る。……文句ねぇな?」

「ああ。だが、死なせるなよ。大事な妹だ」


「お兄ちゃん!?」

 スクーヴァルが声を上げるが、構う様子はない、

「お兄ちゃん! どうして! どうして?」


「スクーヴァル、行きましょう。

 ……あれは、もうステアルラではありませんよ」

 リガスが、彼女の肩を掴んで歩き始める。


「お兄ちゃん! お兄ちゃん!」

「スクーヴァル! あいつにそんな価値はねぇ! 行くぞ!」

「……お兄ちゃん! お兄ちゃん!」


 ステアルラが妹の声に振り向くことは、終になかった。


 ……レグア。完全に忘れ去られているから、バレないうちに戻っとけ。




◆◇◆◇◆

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