第14話
「……ん……」
「起きたか!?」
意識が戻り、呻くなり聞こえた大声に驚く。いつの間にか肩を掴まれ揺さぶられていた。
「大丈夫か? 意識は? 気分はどうだ?」
「ケイディス……そんなに揺さぶったら、いいものも悪くなりますよ」
冷静に突っ込むリガス。ややあって、ケイディスは安堵したように、
「……良かった……」
呟き、近くの椅子に倒れこむ。
「……え~と、何……?」
混乱しつつ、一人事態が分かっていないスクーヴァルが呟く。
見回すと、すぐ側に医者らしき女、ケイディス、リガス、アルシオ、そして部屋の隅にステアルラ。ロスオイトの自室のようだ。
「どういう過程か分かりませんが……氷王神殿に迷い込んだんですよ」
安堵した声で、リガスが言う。
「……あ……」
混乱した記憶の中から、先程の青年の言葉を思い出す。
「オレも死んだと思ったんだけどよ……生きてたから、慌ててこっちに連れて来たんだ」
「あ、ありがとう……」
「普通、人間が入ったら死ぬぞ。あまりにも冷えててな、身体が消滅しちまう。……まあ、オレやリガスやアルシオみてえに、無事なのも居るんだけどよ……殆ど死ぬ。だから、お前が生きてられたのは奇跡だな」
ある世界では、絶対零度――そう呼ばれる。だが、その世界での常識を覆し、それを遥かに下回る冷気なのだ。あの氷王神殿の空気は。
このヘグルマンタスで唯一、結界なしで氷が存在し、氷と雪のみで構成される神殿。それが、氷王神殿。氷王の力が眠るとか色々と言われているが、自説を証明した者は居ない。
「ま、生きてて良かった! んじゃ、後は兄妹水入らずだな」
ケイディスが言って、立つ。
だが、それで雰囲気が変わった。
「……どうした?」
スクーヴァルは沈み、リガスは悩み、ステアルラは興味なさそうな顔をしている。
「……あ! 待って! ケイディス!」
避けるように他に思考を走らせて、肝心なことを思い出した。急いでケイディスを引き止める。
「氷王神殿で、会ったの! ムィアイーグに!」
途端、一同の顔が険しくなった。ステアルラでさえも。
ただ一人、医者がついていけていないようだった。……逃げる機会がなかったのだろう。多分。
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