第7話

――どぐわっ!

 力の奔流。それを受け流し、後ろに飛び退る。だが、足元には次の衝撃。

 何とか躱すが、顔面に向かっていた光弾には対処できなかった。まともに喰らって倒れる。


 夜空から星と月を除いたような空間――とでも、言うべきだろうか。ただ何も無い空間で、二人が向かい合っていた。


「何すんだよ!?」

 本気になって、怒鳴る。

「お前が真面目にやらないからだ」

 さも当然と言わんばかりの、冷静で感情の無い男の声。


「俺は言った。ロスオイトに向かい、そこに居るムィアイーグと接触して来い、と。しかも、痕跡を残さずに。

 お前は、誰に会って来た?」


「スクーヴァルちゃん」

 脊椎反射で答えた様に言うセシトイオ。(もっとも、この連中に脊椎は無いが)

「兵士が出てきたなぁ……」


 もう一度、光弾を放つ。十個に分裂し、異なる軌道で目標を襲う。それらを全て、打ち落とすセシトイオ。


「……シスラクト……なんか俺様に恨みでも?」

「だから、お前が役割を果たさないからだ。真面目にやれ」


 雪よりも白い髪に、銀の双眸、モノトーンの衣服。セシトイオに比べるまでも無く、落ち着いた男だ。やや、筋肉質と言えるだろう。


「……で、次は真面目に行ってくれるか?」

「いや、でも、スクーヴァルちゃん、放っとくのか? それはそれで……」

「そっちは対処済みだ。彼女の死期も分かっている。

 ……で、真面目にやってくれるのか?」


 処刑宣告のように、言い放つ。逆らえば、今彼が構成している物質消滅の力が、セシトイオに襲い掛かるだろう。


「無理です。セシトイオ様には」

 と、女――いや、少女か――の声。見ると、赤い髪を三ツ編にし神官服を纏った、十三前後の少女が立っていた。手には短いロッド。


 彼女は、その容姿に似合わない、落ち着き払った声で続ける。

「対立属性のよしみです。私が参ります」


「レグア……どーでもいいけど、お前、何なんだよその格好」

 セシトイオの呟きに、レグアは、

「この姿なら、入り込めますから」

 言って、消える。


 溜息をつくセシトイオ。その頭に、シスラクトの拳が落ちた。

「少しは反省しろ」

「はいはい」

 言って、消える。


 空間には、シスラクトだけが残った。……皆、相変わらず、か。



◆◇◆◇◆

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