第1章 ――雨の都――
第2話
第1章 ――雨の都――
――撒いた、か……。
我は、安堵の息を洩らした。まったく、あやつときたら……。
今回ばかりは、1人で来たかった。あやつの主観が入っては、面白くない。仮令その気が無くとも、側にいるだけで思考が入るのだから仕方ないではないか。あやつは、知っているのだ。先を知らされては、面白みに欠ける。その為に我はこれまで父上に何も訊かなかったのだから。
――さて。我は眼下に意識を移した。
溶岩が、広がる。
ただ一面に広がるそれは、しかし、一定の場所で違う様相を見せていた。
結界。そう呼ばれている。
我としてはそう遠い感覚ではないのだが、人の子の身では、遥かな昔。氷王が暴走し、その力を喪った。そうして崩れたのは、力の均衡。氷王を含む十五神王総てに言えたが、取り分け、彼と対にあった炎王の力は暴走した。結果、この世界である。
――ヘグルマンタス。そう呼ばれる世界。
運命は、確実に迫っていたが、まだ遠い。今は結界期の終わりの方が身近だろう。
結界期。そう呼ばれた時代。ヘグルマンタスの歴史においては一時。だが、そこに生きる者にとってはその時代。炎王の力を抑えられず、世界が灼熱に飲まれた時代。
結界期は、終わろうとしていた。人の子に知られることもなく。
迫っていたのは――氷王の復活。
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