エピローグ
第80話
エピローグ
「これで……良かったんでしょうか?」
ぽつりと呟いたのは、眩い金色の髪に金色の双眸の女。石造りの建物の裏の空間。大きな木に身を預けている。
「良かったんじゃない?」
そんな声が、返ってくる。木の上から。
「魔眼を受け継いだレクタ族は、二週間に一度は寝込むような病弱な身体しか持てない。それが分かった時点で、レクタ族を存続させる必要はなくなったんだから」
あっさりとした、声だった。まだ若い、少女と言ってもいいだろう。
「……でも……」
「グダグダ言わない!」
と、木の上から降りてきた。赤づくめの、少女。
「そもそも、もっと力を入れないと。魔眼を扱えるのが、イリア以外じゃ、あたしとリーゼだけなんて、考えものよ?」
「……不思議ですね」
ややあって、女がぽつりと洩らす。
「こんなことの為にあなたたちを生み出したんじゃないのに……相談に乗ってもらうなんて」
「ま。予期した通りって訳にはね」
言って、肩をすくめる少女。
と、足音が聞こえた。こちらに近寄ってくる。
「ブラック・オニキス。再調整はどう?」
「ええ。今のところ順調です。
ご迷惑おかけしました。姉様。イリア様」
言って、一番の古株の姉と、創造主に微笑んだ。その姿は――
黒尽くめの、身体のラインに沿った衣服がよく似合う、長いストレートな黒髪と黒い双眸の――若い女だった。
ただ、晴れ渡った空の下、大地は広がる。遥か上位にある神――慈主神スクーバルの名の下、この地の守護を任された、大地母神イリアの下に。
レクタの地。そう呼ばれた場所を、聖地として。
―― Fin ――
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