第76話

「……行ったか……」

 ティーンとドルティオークの乗った飛行船が飛んで行くのを眺めながら、ウォルトはぽつりと呟き――


「ああ、行ったな」

 隣に立ち、呟き返したティーンの姿に驚愕する。


「な、ななな、テ、ティーン!」

 ティーンと飛行船を何度か忙しく交互に見て、飛行船を指さすと、


「乗っただろーが! ついさっき!」

「今降りた」

 首から下げたネックレスをいじりながら平然と答える。


「どーすんだ? 新婚旅行は?」

「一人で行かせておけばいい。あんな奴と旅行なんかごめんだ

 ……さて……」


 ティーンは、カイナの手の中に持っていたブーケを落とすと、

「カイナの屋敷に戻るか……。護衛の仕事がある」



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