第69話

家族が見守る中、儀式はつつがなく進行し――


「我が名、イリアの名の下に、ここに汝、リーゼ・フレイマをレクタの成人と認めます」


 イリアのその言葉を最後に、儀式は終わった。


 祭壇の上で仰向けに寝たまま――意識が遠のいていく。


「この祭祀殿を現実の世界と繋ぎます。

 皆さん、出て下さい」


「…………リーゼ」

 兄が、ぽつりと声をかけてくる。


 両親の方は、かけるべき言葉も見当たらないのか、何も告げてはこない。

 遠ざかって行く、複数の足音。


 ――お父さん、お母さん、お兄ちゃん……


 ――やだ……行かないで……


 彼女の意識は次第に薄れ――やがて白濁色の海に落ちた。



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