第67話

すすり泣く声だけが、部屋に響いていた。


 母は泣く彼女を抱き締め、兄はただ側に佇み、父は握り締めた拳を震わせている。


 誰も、逆らえないのだ。巫女頭の宣告は、絶対である。仮令それを受け入れようとする者がいなくとも。


 昨日は母と兄に微笑みを返したその部屋で、今日は彼女は泣くことを止めなかった。


 と、玄関で呼び鈴が鳴る。心配そうに振り返りながらも、兄が玄関に向かった。

 戻って来たときには、兄は、見た目はまだどうにか少女と言えるような女を連れて来ていた。


 深い赤の髪に同色の瞳。身に纏うローブもマントも、装身具に使われている石も深い赤。一見して赤づくめの女である。


「……二人だけにしてもらえる?」

 その言葉に、やや間を置いて、母と父と兄は部屋を出た。


「……リーゼ」

 ベッドに座って泣く彼女の横に座り話しかけるが、反応はない。すすり泣くのみである。それでも彼女――セミ-プレシャス プロトタイプ 〇一三 コードネーム《ガーネット》は言葉を続ける。


「分かったでしょ? 誰も村を滅ぼされたことなんて恨んでないって」

 すすり泣き。


「あたしはね、仇討ちなんかに手を貸すつもりはないけどね……」

 と、ガーネットは、彼女の手を取り、言う。

「自分の為の戦いなら、喜んで手を貸すわよ」



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