第65話

「ここはいわば死者の世界。この村は、魂のみの死人の村とも言えるでしょう」

 おっとりとした口調で、イリアは言葉を続ける。


「私は、あの日、巫女たちを総動員して、あの村に結界を張りました。死者の魂が冥界ではなく、私があらかじめ準備しておいた、この村に向かうように。


 この村の中では、魂は実体となります。つまり、あなたが昨日から接してきた人々は、魂だけの存在だったのです。今、この村で肉体をもっているのは、あなたと、巫女たちだけです。

 この話は、そういうことで理解していただけましたか?」


 彼女がまた無言で頷くと、イリアも一度、頷いて、

「では、本題に入りましょう。何故私たちが五年間、あなたを監視するに留めていたかにも話はつながります。


 結論から言えば――

 リーゼ・フレイマ。あなたはドルティオークと結婚なさい」



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