第62話

未だ日が昇らない明け方の頃。

 彼女は、誰かが戸を叩く音に目を覚ました。


「何? お兄ちゃん」

 生体探査の呪法で扉の外の相手が兄だと分かっていた彼女は、目をこすりつつ扉を開けた。


「しー! 大きな声出すなよ」

 囁くような声量でそう言うと、兄は、

「着替えろよ。すぐ出かけようぜ。

 母さんたちには内緒な」

 そう言って、扉を閉めた。



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