第54話
「先に戻っていろ」
ドルティオークの言葉に、部屋を出かけていたティーンは逆に足を止めた。
「俺はこの男と話がある」
「ウォルトをどうするつもりだ?」
険悪な声で尋ねるティーンに、ドルティオークは嘆息混じりに、
「話を聞きたいだけだ。危害は加えん」
「信用できるか」
「……分かった。なら、そこで聞いていろ」
言うと、ウォルトの方に向き直る。
「一つ、尋ねたいことがあるが……」
絶対に答えないという意志を顔全体で表現しているウォルトに構わず、ドルティオークは言葉を続ける。
「リーゼの瞳は何時から青い?」
「…………何……?」
顔に出した意志を消し、思わずウォルトが呆然と聞き返す。
「リーゼの瞳は何時から青いかと訊いているんだ」
「……ん、んなもん、生まれつきだろーが!」
ウォルトの声に、しかしドルティオークは首を横に振り、
「四年前、俺から離れて行った時は、緑色だった」
「……緑……?」
部屋の戸口に立つティーンに視線を移し、
「……んな……目の色が変わったりするかよ。 確かに金色に変わるのは見たけどよ……」
「そうか。知らないのならいい。
リーゼ、戻るぞ」
「ちょっと待て……!」
ウォルトの制止は無論聞かず、ドルティオークはティーンを連れて去って行った。
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