第51話
「どこへ向かうつもりだ?」
飛行船の中。魔力介入による自動航行で行き先を設定してきたドルティオークに、ティーンは険しい声で問いかけた。
「着けば分かる」
予想通り彼女は先程の服装のままで、出掛ける準備などかけらもしていなかった。装身具やハンドバッグ、カクテルバッグの類いは、充分に用意してあるのだが。
ティーンはそれ以上の追求はせず、座席を立って窓際に行った。窓の外に呪法で明かりを生み出すが、瞬時に後方へ遠ざかり消えて行った。かなりのスピードで飛んでいるようである。
――沈黙が、その場に落ちる。
元よりティーンは必要が無い限りドルティオークには話しかけないし、今日は何故かドルティオークの方も言葉を控えている。飛行船が出す音を無視すれば、その場は静かだった。
だが――
「……どういうつもりだ?」
二時間ほど経ってから、ティーンが沈黙を破る。
飛行船の速度が落ち始めた頃である。つまりは、この近くに目的地があるということなのだが――ティーンの視線の先には、夜の闇に包まれた、セルドキア王国呪法院があった。彼女の予想通り、飛行船は呪法院の敷地に降りる。
「何を考えている?」
沈黙を守るドルティオークに詰問すると、彼は呟くような声で、
「行って来い」
それだけ答える。
「……何……?」
「後から迎えに行く」
呆然としたティーンの声に、また呟くような声で応じると、彼は再び口を閉ざした。
◆◇◆◇◆
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます