4、喪ったもの、喪うもの

第50話

4、喪ったもの、喪うもの




「どうしたんだ? リーゼ」

 昼食にも夕食にも手をつけなかった彼女に、ドルティオークは慎重に尋ねてみた。が、返事はなく、沈黙が落ちただけである。


「……リーゼ?」

 もう一度声をかけるが、やはり返答はない。いつものように睨みつけてくることもなく、ただ、テーブルに肘をつき宙を眺め、ぼんやりとしている。


「…………昼間のことか?」

「お前には関係ない」

 やっと返ってきた言葉は、どことなく上の空のものだった。


「…………」

 暫し黙考した後、彼は彼女の腕を掴み、椅子から立たせる。


「出掛けるぞ。準備をしろ」

 それだけ言って、部屋から出て行った。



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