第42話

呼び出し音。彼女は、意識を繋いだ。

『ガーネットか? 俺だ』

「ブラック・オニキス……自覚が戻ったの?」


 そんなことは無いことは分かっていた。それなら、こんな方法で連絡を取ろうとする筈は無い。今、彼は、彼女の自宅として登録されているところに電話をかけただけで、彼女がわざわざそちらに意識を繋いだのである。


『また訳の分からねぇことを……オレはウォルトだ。何なんだよ、ブラック・オニキスって』

「自覚が戻ってないなら何の用?」

 彼女は、憂鬱に嘆息し、尋ねた。


『ここのところ、ティーンの奴と連絡が取れねぇんだけどよ……』

「そりゃ、取れないでしょ

 『禁忌』に捕まったもん」

 事もなげに、あっさりと言い放つ。


『……なっ! ……それで、ティーンは生きてるのか!?』

「心配しなくても、丁重に扱われてるわよ。

 じゃあね」


 言い、一方的に電話を切り、意識も絶つ。


 彼女の目の前には、ドルティオークの拠点で過ごすティーンの姿が映し出されていた。

「あの剣……もしかして……」


 ティーンが手にした短剣を見つめながら、ガーネットはぽつりと呟き、かぶりを振る。

「……まさかね。プロトタイプあたしたちじゃあるまいし……」



◆◇◆◇◆

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