第25話
――まったく、世話のやける……!
ティーンと別れて三十分ほど経ってから。
ガーネットは、仮眠室の方へ向かっていた。ティーンの気配のする部屋の前に立ち止まると、扉をノックし、
「ティーン、起きてる?」
声をかけてみる。
返事は、ない。
――眠ったかな? でも一応念のため……
ガーネットは、ノブに手をかけるが、鍵がかかっている。鍵を外すことはできるが、それでは元通りに閉めるのが難しい。――と、なれば――
ガーネットは、辺りを見渡し、誰の目もないことを確認する。元々、生体探査の呪法で近くにティーン以外の人間がいないことは承知済みだが……念のためである。
誰もいないことを確認すると、ガーネットは、扉を素通りし、部屋の中に入る。
別に何ということはない、ただの仮眠室である。ガーネットが昨夜の深夜から今朝まで念のために入っていた部屋と変わりない。ベッドがあり、テーブルがあり、椅子があり、そんな部屋だ。
ティーンは、椅子の背もたれにマントをかけ、眠っていた。ガーネットは、眠っている彼に近づくと、額の辺りに手をかざし、
「眠りをもたらし、安寧へと導くものよ。暗き闇の中で安息をもたらすものよ……」
眠りの呪法を、短縮せずに、眠っているティーンに更にかける。
これで暫くは、よほどのことがない限り目を覚ますまい。
用を終えたガーネットは、入って来た時と同じように、扉を素通りして出て行った。
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