第26話

人気のない所――と言えば、彼女が昨夜も利用した裏庭だった。普段なら、警備員が何人かうろついている筈なのだが……昨日ティーンが倒してくれたお陰で誰もいない。


 その裏庭に、彼女――ガーネットは佇んでいた。瞳を閉じ、意識を集中させる。


 ――スペサルタイト

 ――スペサルタイト

 彼女の意識に自分の意識を同調させつつ、呼びかける。

 何度か呼びかけるうちに――


 ――聞こえるわ。ガーネット。

 意識の中に、声が響いてきた。接触に成功したらしい。


 ――イリアは警戒しながら現状を維持するように……


 ――それは後でいいから!

 スペサルタイトの声を遮り、ガーネットは言う。


 ――緊急事態よ。そっちに、ホーセルの粉末とレズラの実はない?

 ――ちょっと、それって……

 ――いいから早く! イリアに聞いて!


 暫し、声が途切れ――やがて再び聞こえてくる。

 ――両方あるって。


 ――じゃあ、それ持って、大至急戻って来て。大至急よ。


 ――何があったの?

 ――何でか知らないけど、リーゼがカイアスズリア持ってるのよ!


 ――分かった。急いで戻るわ。


 深刻な声を最後に、交信は途切れた。

 ガーネットは、嘆息し、

「あー、頭痛い」

 昨夜も言ったその台詞を、また口にした。



◆◇◆◇◆

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る