第17話

――どういうことだ?

 予言者の情報を得て、トースヴァイの神殿を後にしながら、ティーンは考え込んでいた。


 何故、巫女頭は警告を握り潰したのか。


 いや、それ以前に、何故巫女頭が『禁忌』に敗れたのか。


 巫女たちもそうだが、特に巫女頭は強大な力を持っていた筈である。巫女たちは、今のティーンと互角かそれ以上。巫女頭に関しては、もっと上の力を持っていた筈だ。一族の村にいたとき、村の大人たちの話を聞いていたが、数百年前に溯って、巫女頭の力の強大さが噂されていた。


 代替わりで力が失われたのではない。巫女頭は、代替わりなどしていないのだから。


 そう。巫女頭は過去も未来もただ一人。悠久の時を生きてきた存在なのだ。


 その巫女頭が敗れたとなれば、ティーンに『禁忌』を破る力はない。しかし、それでも今以上の力をつけることはできなかった。今のままで、『禁忌』に立ち向かうしかない。


 ――おそらく、彼にはもう、残された時間はないのだから。



◆◇◆◇◆

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る