第10話

ぱらぱらと、天井から埃と砂が落ちてくる。爆音と振動は、ここにも充分すぎるほど響いていた。


 呪法院のミーティングルームである。この建物も、決して脆い造りではないはずなのだが……もう何度目か数えるのにも飽きるほど、爆音に揺らされていた。


 と、部屋の扉が開く。建物の入り口に近い方ではなく、建物の奥につながる方の扉である。

「お前ら、この騒ぎは何なんだ?」

 部屋に入ってくるなり、尋ねてきたのはこの呪法院の教官の一人である。


「……戦技院からも何人か来てるみたいだし……」


「ガーネットが暴れてます」

 また振動が響く中、呪法院のメンバーの一人が簡潔に答える。


「ガーネットが? 何でだ? スペサルタイトに落書きでもしたのか?」

「まさか」

 左耳にピアスの男が答える。


「ただちょっと、院長の指示で、模擬戦をやってるだけですよ。……ティーン・フレイマと」

 男が答える間にも、二回ほど地震のような振動があった。


「ティーン・フレイマ? あの戦技院の化け物か?」


戦技院こっちは昨日終わって、今日から呪法院そっちですよ」

 戦技院のメンバーの一人が言う。


「…………で、ガーネットとまともに渡り合ってるのか?」


「少なくとも、ガーネットは本気出すって言ってましたけどね」

 ウォルトが答えると、教官はよろめき、


「……何てことだ……ガーネット一人でも手に負えんと言うのに……」

 呟く。

 と、爆音が収まった。


 静寂が、部屋に落ちる。


「……終わった……のかな?」


「……そうかもな。

 外に出て見るか」

 一同は立ち上がり、外へ繋がる扉を開いた。



◆◇◆◇◆

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る