第9話

「……どーなってんだ……こりゃ……」

 地上と空中で対峙する二人を眺めながら、ウォルトはぼそりと呟いた。


 一体どこで身につけたのか、ティーンは短縮詠唱を完璧に使いこなしている。それどころか、呪法院のメンバーで最強と言えるガーネットと互角に渡り合っているのだ。


「彼、かなりやるみたいだね」

 ウォルトの隣で呟いたのは、左耳にピアスをつけた、派手なローブの男。

「僕じゃ勝てないだろうなぁ……」


 話している間にも、二人の間で行使される呪法は、次第にエスカレートしていっている。ついに、呪法院の建物まで揺らす爆音が響き渡り、草原を囲んでいた森の一部が消滅する。


「……なんか……避難した方がよくねーか?」

「僕もそう思うけど……院長、止めないんですか?」

 ピアスの男に問われ、ハウライドは呑気な口調で、


「このまま続けてもらうわ。みんなは建物の中で待ってて頂戴」

 二人から目を離さずに、言う。


 結局、ハウライドを残した全員が、呪法院の建物に避難した。



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