64・街中巡り…3人で?

第64話

「今日、楽しみにしてたよ」

「俺もだよ」


今日は出掛ける日でまだまだ知らない事を教えて貰う日でもあった。


「今日〜何処に行くの〜?」

「……」


私達2人っきりの筈が何故か茜さんが居る。


「早目に書類仕上げたんだよ〜。褒めて〜、紅露」

「……」


紅露、完全に無視。


「ちょっと、十夜さん!今日は私と紅露が2人っきりで出掛ける日なのよ?なんでアンタがいるの?」

「……」


その台詞そっくりそのままお返ししますよっ!と心の中で思ったけどニッコリ笑って茜さんに返した。


「紅露が選んでくれたのが私なので今日も一緒に居るんですよ?」


嫌味っぽく言ってみたけどこの女性には馬に念仏だろうな…と思いながら視線を紅露に移したら目が合った。


「どうした?霞」

「なんでもない。今日本当に楽しみだね」

「あぁ、楽しみだ」


恋人繋ぎをして歩き出した。


右側からキャンキャンと何か言ってる茜さんは無視して歩き出した。


「霞、見てみるか?」

「うん!」


街中歩いて可愛い雑貨屋さんを見つけて紅露が促してくれて店内に入る。


「可愛いー」


紅露と少し離れて見回ると茜さんの声が背中越しで聞こえてくる。


「これ、紅露と私にピッタリ〜」

「お前だけで充分じゃね?」


こう聞いてると茜さんと紅露って恋人同士の会話をしてるみたいに聞こえる。


目の前の可愛い雑貨が霞んでいく。


もっと紅露に甘えていいいと思うのだけど弱味を見せるのは得意ではないと思っていたらフワッと周りの空気が変わった。


「霞、可愛いの見つけたか?」

「………!!」


紅露が私を後ろから抱きしめてくれて肩に頭を乗せて耳元で喋っていてくすぐったいのが上手になった。


「紅露っ!くすぐったいっ」

「見つけた?見つけない?」


それを聞いてくる紅露にどうにかして紅露の腕から逃れようとしたけど無理だったから慌てて可愛い雑貨を手に取って見せる。


「これが可愛いなって思った!」

「可愛いな。買うか?」

「可愛いって見ていただけだから大丈夫」


顔から火が出てるんじゃないかって思う位に紅露が密着してくる。


「あんた達の方がよほど恥ずかしいわ」


遠くから茜さんがボソッと言ったけど聞こえなかった。


「じゃ、次の店行くか!」

「うん…」

「次ー!!行きたーい」


それから3人で街中を周ったのは言うまでもなく。


こんな街中巡りも良いかなぁーって思ってしまったけど…


「紅露、これ見てー」


紅露の名前連発の紅露とすぐ2人っきりになる態度にやっぱり良いかなぁー…は却下だと思った。

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