62・茜は手強い相手

第62話

「そう。俺はお前をとしては見れない」

「……っ」


紅露はハッキリと茜さんに告げたのに茜さんは満面の笑顔で紅露の腕に絡みつく。


「ハッキリ言う紅露だから好き。好き、紅露」

「俺は嫌い」

「……」


二人の会話を聞いてると別のドキドキがきてハラハラするけどこれが二人の会話なんだなって一人で納得してしまった。


「霞、今日起きれたんだな」

「自分でもビックリなんだけど起きれたんだよ」


嬉しくなって声が弾んでしまったら、紅露がムスッとした顔をしていた。


「俺の役目取るなよ。霞を朝起こすのは俺の役目だろ?」

「そんな役目要らないからね!これからは自分で…」

「……」


捨てられた犬みたいな目で私を見てきて訴えかけてきてる。


「分かったわ!紅露が起こしに来て?」

「毎日行ってやるよ」


その話はここで終わりかと思ったらまだ続いた。


「アンタ、高校生になってもまだ一人で起きれないの?恥ずかしい〜」

「……」


そうだ、茜さんが紅露の右腕に絡みついて三人で歩いていたの忘れていた。


朝私が起きれない事を知られてしまって弱味を握られてしまった。


「ってか、アンタと紅露ってすぐ二人の世界に入るけど私が紅露の彼女なんだからね!」


そう言いながら私を睨みつける茜さんに、怒らずに冷静に受ける。


「私が本物の紅露の彼女です。本物の彼女だから甘やかされているんですよ」


扇があったら開いて口元を隠して薄笑ってる所だけども無いので口元を動かさずに微笑みを絶やさずに返した。


「茜、いい加減にしろよ?これ以上霞を…」

「大丈夫よ〜、紅露。私が霞さんをイジメると思うの〜」

「……」


充分イジメに入ると思いますけどこれは胸の中にしまっておこうとそっと閉じた。


言い合いをしていたら学校に着き授業が始まる。


だいぶ追いついたと思うけどまだまだ追いつかない部分もあって自分の努力次第しか無いと思う。


「霞、分からない事があるなら俺が教えるから」

「うん、ありがとう。紅露」


紅露が側に居てくれるから頑張ろうと…この世界に戻ろうと思った。


見つけてくれたのが紅露で本当に良かった。


贖罪は…一生背負って行かないといけないと思うけども…。


「じゃあね、紅露」


スルッと腕からすり抜けた茜さんは違うクラス。


「疲れる…」

「あはははっ……」


笑って答えるしかない。


言って聞く相手では無いから厄介でもある。


「茜に関してはあまり相手しなくていいから」

「うん。サラサラに流すよ」

「霞なら大丈夫だと思うよ」


大丈夫かは分からないけどね…

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