59・伝えてくれた事

第59話

「……」


紅露の腕の中から思い切って聞いて見たけどまずかった?


でも、私としては“霞さん”を奪ってしまってこの体に居座り続ける事が心苦しいのもある。


「リリナーアはそんな事考えていたのか?」

「えっ?」


私の頬を優しく撫でて優しい目で私を見てる。


「俺がの事をどう思ってるか?…なんて」

「だって…私…」


貴方から大切で大好きだった女性を奪ってしまった女なんだよ?


恋人同士になったからって寂しい気持ちは変わらないと思うんだよ。


「…会えなくなって寂しくなった」

「…そう……」


紅露の口からそんな言葉が出て来てズキッと痛んだけどそんな資格無いのに…


「!!」


急にキツく抱きしめられてビックリして声が出て来なかった。


「霞に会えなくなったのは寂しくなったけど俺は1人じゃないって気付かせてくれた女性がいるから今は寂しくないし幸せだよ」

「……そう…」


いつの間にそんな女性がいたなんて…。


私達恋人同士じゃなかったの?


やっぱり偽りだったの?


「リリナーア」

「!!」


耳元で囁かれて体がビクッと反応する。


「俺の側に居てくれてありがとう」

「…紅露…?」

「お前が居てくれるから俺は幸せって感じるよ」

「私、だって…こんな…」


ちゃんと言葉が出て来ない。


「俺が恋愛も生活も俺色に染められるリリナーアが好きだよ」

「紅露…私でいいの?」


涙が流れてきてぐちゃぐちゃな顔になってる。


「可愛いな〜。泣き顔も俺好み」


両頬を包まれて紅露の顔が近づいて来るからゆっくり目を瞑った。


柔らかな唇が重なり触れ合うキスから舌が中に入ってくる。


「んっ…ふぅっ…」


こんなキスされたら息が続かなくなるし気持ち良すぎて立っていられなくなる。


「紅…露…待って…」

「待たない。俺のリリナーア」


殿下にもこんなに激しく求められた事無い。


あっ、殿下とはキスもまだだった。


体を重ねたら婚約から結婚する事になるしね。


「…リリナーア?俺のキスとの最中に何を考えていたの?」

「何も考えてないよ?」


殿下との事を考えていたなんてそんな事口が避けても言えない。


「俺の事以外考えらない様にしよっか?」

「えっ?」


ニッコリと笑った顔が怪しく有無を言わさずに私の両手を紅露が封じた。


「紅露?何を?」

「何って…リリナーアが俺しか見れない様にしようと」

「見てる!紅露だけを見てる!」


紅露の腕が私の私服の中に入り込んでいく。


「あっ…」

「可愛い、リリナーア」


胸に紅露の腕が近づいてくる。


「あっ、待って…」


ここ、玄関だからー!!!

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