57・紅露の仕事

第57話

「紅露、生徒会の仕事がまだ終わってないんでしょ?」

「もう俺の仕事は終わらせた。1人で霞を帰らせる俺だと思う訳?」


そう言われて顔を近距離で覗かれたから慌てて首を振った。


「一緒に帰れて嬉しい」

「俺もだよ」


キス出来る顔の近距離にドキッとしたけど何事もなく紅露の顔が離れた。


「会長、まだ居てくれて良かったです!」

「どうした?」


紅露を探していた副会長が書類を握って紅露の元に来た。


「会長、これなんですけど…」

「これは…」


生徒会の話は分からないから少し紅露から離れようとしたら手をいつの間にか握られていて“離さないよ”って言われてるみたいで力強く握られていた。


「これは明日決算するよ。急ぎの用じゃないだろ?」

「はい。明日で大丈夫です」


紅露は私の方を見て笑って「帰ろう」と言って歩き出した。


「お疲れ様でした。会長」


副会長が挨拶をして声が遠くなっていく。


「紅露、本当に大丈夫なの?」

「大丈夫だよ。絶対これだけは譲らないから」


そう言って私を優先してくれるのは嬉しいけど紅露にしか出来ない仕事だってある。


「紅露」

「どうした?」


名前を呼んで黙って紅露を引っ張ってある場所に向かった。


「霞?」


ある場所に着いて立ち止まった。


「会長!帰られたんではないのですか?」

「会長を連れ戻しに来たのでよろしくお願いします」


生徒会室に紅露を連れて来た。


「霞!?」

「私は大丈夫だから。紅露しか出来ない仕事をして私の元に戻って来て?」

「…霞には敵わないな」


本当はね、寂しいんだよ。


本当はね、一緒に帰りたいけど私のワガママを通したらきっとこの関係は壊れてしまう。


“霞さん”にはなれない私だけど霞さんらしく振る舞うから紅露に伸び伸びして欲しい。


「気をつけて帰れよ?着いたら」

「limeするよ。頑張ってねー」


手を振って紅露を生徒会室に送り出して私は踵を返して家路に向かう。


「紅露を生徒会室に戻してくれて礼を言うわ」

「私はただ、紅露にしか出来ない事をして欲しいだけです」


途中で書類を抱えた茜さんに会った。


推薦・・した貴女だもんね。責任があるでしょ?」

「そうですね。推薦したからには紅露を支えるつもりではいますわ。紅露の彼女は私なんですから」

「そう。でも生徒会室にいたら私が紅露の彼女よ?」

「……本当に懲りない人ですね。尊敬しますよ」


茜さんは言うだけで言って生徒会室に向かったけどモヤモヤとムカムカが入り混じった気持ちを抱えながら家に帰った。

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