52・この世界で生きていく

第52話

〔偽装恋愛なんでしょ!?〕

「……」


茜さんに遠からずも見破られた事にどう反応していいか分からずに紅露に迷惑をかけてしまい部屋で床に座って膝を折り曲げて気分が落ちていた。


「そなたはかわいい」

「…殿下…」


殿下に会いに来たと言うか携帯が目に入り無意識に手が動いていた。


「殿下…どうしたら良いですか?」

「触るな!触って良いのはただ1人」


「そのただ1人は…誰なのですか?」

「時間だな。そろそろ参ろうか」


殿下に触れても私の質問に答えてくれないのは頭の中では分かってるのに答えて欲しいと願ってしまう。


コンコンとノックがして慌てて電源を落とし、呼びかけに答えた。


「リリナーア?」

「紅露?どうかしたの…?」


ドアの向こうにいたのは紅露でビックリした。


「……」

「紅露?どうかー」


言葉を遮られると同時に紅露に抱きしめられた。


「茜が言った言葉、気にするな。俺の彼女はお前なんだよ」

「……」


“うん”なんて言葉を口から出したくない。


偽装恋愛してる私と紅露。


自分の気持ちにずっとずっと気付いていてもこの気持ちは本当の気持ちは言ってはいけない。


「リリナーア、お前は俺の彼女だからな」

「……っ」


紅露…今の言葉は聞き間違いなの?


「紅露…今の言葉は本当なの?」

「今の言葉?」


あぁっ…やっぱり私はさんの代わりの彼女。


「リリナーア…俺の愛おしい俺の可愛い彼女」

「!!」


また私の名前で愛おしい言葉を伝えてくれてる…!


「紅露…」


もう、ダメ…あふれてこぼれてしまったこの気持ちを受け止めて欲しい。


「紅露、大好きよ。私も大好き」

「……!?」


言ってしまったけど撤回はしないわよ。


茜さんになんて負けたくないし、紅露を誰にも渡すつまりは微塵もない!!


「紅露?…嫌だった…?」

「リリナーア、やっと返事くれたな」

「待たせてごめんなさい」


紅露が私の頬を撫でて言葉を続ける。


「2度と元の世界に戻れないよ?」

「うん」

「殿下に会うのは制限かけるよ?」

「プッ…いいよ」


殿下に会うのも2度と元の世界に戻れなくても

紅露のいる世界で生きて行く。


「紅露…これからもよろしくね?」

「あぁ。もう嫌だって言っても逃がさないから」


ゆっくり瞼を閉じて紅露の優しくて強い口付けを受け入れる。


「んっ…」


頭の中がボッーと熱くなる優しいキスにフワフワと心地良くもっとってねだりたくなってしまう。


「紅露…もっと…」

「仰せのままに。お姫様」


角度を変えてもっと強く口付けをしていく。


今はこの幸せに浸っていたい…

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