51・家族団欒

第51話

あの後…終始無言でお互い家まで帰って来た。


茜さんに改めて突き付けられて何も言えずに何か言おうとしても口が開かない。


「じゃあ、霞」


言葉をかけられ頷いて家の中に入って行った。


「霞?帰ったの?手伝ってちょうだい」

「ただいま。はーい」


駆け足で自分の部屋に行き鞄を机の上に置き制服を脱いで一階に降りる。


「お母さん、何を手伝えば良い?」

「麗のオムツお願い。ウンチしてるのかもしれないの」

「はーい」


私の妹・麗の所に行くと私に笑いかけてくれるから機嫌が良いんだと感じる。


「麗、オムツ替えよーね」

「あっ、あっ」


麗を寝かせてオムツを替えていくとお母様が言った通りウンチが出ていた。


「いっぱい出たねー。スッキリした?」

「あっ、あっ、あー」


スッキリしたみたいで麗が上機嫌だからオムツ変えるのも苦労無しだから助かる。


最初慣れなかったけどここの世界に来てもうじき早くて3ヶ月になろうとしているから四苦八苦していたのが嘘みたい。


「麗、サッパリしたね」

「あっ、あっー」


私の髪の毛を片方で引っ張りもう片方で私の服を握りしめる。


「麗、お姉ちゃんお母さんの手伝いしてくるから一人で遊んでいてね」

「あっ?あー」


麗を降ろして座らせてお母様の所に行こうとしたら麗に遮られた。


「麗?お姉ちゃん…母さーん」

「麗と遊んであげて。ずっと遊んであげてないでしょ?」


お母様から言われて「そうだ」と気付いた。


麗とずっと顔を合わせてなかった事。


麗はまだ赤ちゃんだから私が一階に降りても寝てる姿しか見てなかった事に気付いてそれを寂しいと感じていたけど麗も寂しいと感じてくれていた事に嬉しかった。


「麗、何して遊ぶ?」

「あっー、あっー」


麗は自由気ままに私の指を握り上下に降り回す。


「麗、楽しい?」

「あっー、あっー」


麗が楽しそうだから良いかって思ってしまった。


「霞、麗を連れて来て。ご飯だからー」

「はーい。麗、ご飯だよ」


麗を抱っこして麗の席に座らせて私も自分の席に着いた。


「美味しそうー」


今だにこの世界に来て料理の名前が分からない事ばかりだけどお母様の料理が美味しいのは確か。


「いただきます」


湯気が立ってるお皿に細長い向こうが見える真ん丸の食べ物にとろ〜りと伸びる白く焦げた跡がありパリッと音がして熱くてフーフーして口に運ぶ。


「どう?グラタン。ちゃんと美味しいかしら?」

「うん!美味しい!」


これは“グラタン”って名前なのね。


お母様、本当に色んな料理を知ってるから尊敬してしまう。

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