44・生徒会長なんだもん…

第44話

午後の授業は授業にならなかった。


自分から紅露にキ…キスを迫ってしまった事に後悔と言うか今更なんだけど恥ずかしくなってしまった。


「……」


席替えして紅露と離れ離れになってしまい今見えるのは紅露の背中だけ。


「………」


授業中なのに身に入らないなんてそんな事あってはならないのに…。


ノートにグルグル書いては消して書いては消してをしていたらノートがグチャグチャになった。


「…夜!十夜!」

「あっ!はいっ?」


今だに慣れない自分の苗字に慌てて反応して立ち上がった。


「十夜、この問題の答えは?」

「…すいません。聞いてませんでした…」


違う事を考えていたから聞いていなかったのは事実だから素直に謝った。


「十夜、次回の問題の解きは十夜からだからな」

「……はいっ……」


次回の問題って私から答えるって事?


何を出されるか分からないのに〜〜……。


それから私の謝罪の後は何事もなく授業は終わった。


「霞〜災難だったね…」

「あの先生って本当に嫌味ったらしいんだから!」

「まぁ、私が悪いんだからね。ね?」


友人二人を慰めていたら紅露が立ち上がるのが見えて言葉を止める。


「霞」

「紅露」


紅露が手に持っていたのは先程の授業の教科書。


「次の問題の答えはコレ。先生…次のページの問題出すの好きな傾向あるから」

「……」


先生の傾向って…人間観察してないと分からないよね?


「紅露、ありがとう!」


ここは素直に“ありがとう”と笑顔満面で礼を伝えたら紅露の耳が真っ赤になっていった。


「これ、紅露の教科書だから自分の教科書に印付けておく」

「それが良いな」


紅露とこんな会話だけをしていたら友人二人がニヤニヤして見ていた事に気が付いた。


「?どうかしたの?」

「いやぁ〜お二人ともアツイですねって」

「本当に…お互いアツアツです…」

「?」


友人二人の言葉の意味はイマイチリリアーナとしては分からなかったけど良い意味としてとっておこうと思った。


「会長!」

「どうした?」


教室の入り口から紅露が呼ばれてそっちに行ってしまった。


「……」

「……」


二人とも難しい話をしてる?と表情から読み取れたけどそれ以上は分からなかった。


私でもそれ以上立ち入ってはいけないがある。


「霞、今日は先に帰ってくれるか?」

「あっ…うん…」

「気をつけてな。家着いたらlime待ってるから」


遅くなるの?


茜さんと一緒に帰って来るんだよね?


…なんて聞ける訳無い。紅露は生徒会長なんだもん。学校の事を背負ってる。


だから応援してあげなくちゃ…。

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