39・紅露にバレたけど…

第39話

「リリナーア?どうかしたのか?」

「何でもないよ?紅露こそどうかしたの?」


紅露をこれ以上部屋に入らせない様に懸命に体を押してるのに1ミリも動かない。


それより私が泣いてる姿が気になったらしくキョロキョロ顔を動かして一点集中した。


「リリナーア…」

「……」


携帯を見て気が付いたはず。


私は紅露に怒られる。


「!!」


フワッと体が上がり抱きしめられる。


「紅…露!?」

「何も言わなくて良いよ。俺がいるから」


紅露は私が傷付くと思って黙っていてくれたの?


本当は霞さんの体を借りた何者か分からないまま側に置いてくれていた事に…


「紅露…ごめん…なさい…。殿下には会えたんだけど…」

「言わなくていい!」


紅露がキツく言い放つけど私も負けじと言葉を続ける。


「…さんには会えなかったの…」

「!!」


紅露の体がビクッと一瞬だけ震えてる小さく「そうか」と言ってもっとキツく私を抱きしめる。


紅露だってきっと“霞さん”に会いたいと思う。


こんな偽装恋愛してる私でなく本当に愛していた女性に。


それを奪ってしまった私は償いきれない罪を犯してるから償いたいのに償い方が分からない。


「紅露…きっと霞さん、見つかるから」

「リリナーア!それ以上言うと犯すぞ?」

「だって!紅露だって…霞さんと…んっ」


“これ以上口を開くな”と言う様に強いキスが私に向かう。


息が続かない強い激しいキスに紅露の胸を叩くけど紅露が唇を離してくれない。


少し離れたからその一瞬で息を吸って酸素を入れ込む。


「…鼻で息を吸うんだよ。リリナーア」

「んっ…はあっ…」


貪る様な熱いキスにクラクラしてきたけど今お互い想ってるのは目の前にいるお互いだけと思うと心が踊る。


「んっ…はあっ…紅露」

「リリナ…好きだ。お前が好きだ」


好き…その言葉を聞いて頭がクラクラしていたのが一気に冷や水をかけられた状況に陥った。


「リリナーア、好きだよ」

「……私は…」


紅露がやっと離してくれてリリナーアは紅露の胸の中にスッポリ入り込んでしまう。


「いつかで良いから返事が欲しい」

「……」


勘違いしてはいけない。


紅露は“霞さん”に言ってる言葉。


“リリナーア”に言ってる言葉では無い。


他の事では強く行けれるのに紅露の言葉に自信があっという間に無くなってしまう。


それは、紅露が好きだから。


これは本当の…リリナーアの気持ち。


「とりあえず、これは消しておけ」

「あっ、うん…」


紅露は携帯のゲームを消した。


殿下と当分会う事は無いかな…って思った。

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