38・久しぶりのお姿

第38話

お風呂から上がり部屋で髪の毛乾かしていたら携帯が短く鳴る。


「?」


手に取り見たらゲームのお誘いだった。


「…ハートランブリーget…?」


紅露が居ると私から携帯を取り上げてすぐ消してしまうけど今は居ない。


「見て良いよね…?」


恐る恐るホーム画面の中にあるゲームを起動させた。


「……!!」


軽快な曲と共に見知った顔が私の視界に入り込む。


息をどう吐いていたか分からない。


「殿……」


久々に見たお姿。


「…殿下!殿下!リリナーアはココにおりますわ!」


画面の中で笑ってる殿下に懸命に声をかけるのに殿下は気付いてくれない。


「殿下!私の事が分からないのですか?」


殿下を呼んでも応えてくれない。


「君を離したくない」

「!!」


殿下だけの画面になり殿下がそう話す。


「リリナーアはここにおります!殿下…無事で良かったです」


殿下に触ろうとしたら言葉が変わる。


「私に触れるな!無礼者!私に触れて良いのは心に決めた愛おしい者だけだ!」

「!!」


殿下には心に決めた愛おしい者がもう既にいらっしゃってる…?


心が静かに停止する。


あぁ、私…殿下に振られたんだわ…。


「…婚約破棄されるわね…。でも…本当に…」


殿下を久しぶりに見て思う事はただ一つ。


「本当に紅露にそっくり…。髪の毛の色と長さが違うだけで…こんなに似るの?」


画面が霞んでいく。


私、涙を流さずに我慢していた事に気付いて涙が流れる。


「殿下、幸せになって下さい」


殿下にもう一回触れたらまた言葉が変わって今度は私をドギマギさせる。


「そなたが愛おしい。私の側にずっといて欲しい」

「……っ」


殿下の言葉が殿下を触るとコロコロ変わってどれを信じて良いか分からない。


「殿下!本当の事を言って下さい」


殿下に本当の事を言ってもらいたくて触ったら違う場所を触ったらしく画面が変わってしまった。


「あっ!殿下…!」


殿下が画面から消えて今度は私の見覚えのある写真が出てきた。


「あっ……!!」


刺繍を真剣に編んでる姿、殿下と一緒にベットに入る途中の姿…王妃教育をしてる姿…。


「私は…誰かに見張られていたの?」


怖くなって体が震える。


「リリナーア…!これも見つけた…から…」

「……紅露!」


廊下で紅露の話し声が聞こえながらドアが開き目が合う。


「リリナーア?どうしー…」

「!!あっ!何でもないっ」


紅露が私の涙姿を見て顔が引き攣っていく。


「リリナーア?」

「何でもないよ。ちょっとビックリしちゃっただけで」


これ以上は紅露に気付かれたくない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る