36・キス…キス!

第36話

「リリナーア…今日は帰ろうか」

「えっ?」


スルッと手が私の頬から離れて紅露が下を向いて立ち上がろうとしたから慌てて紅露の手を掴んだ。


「紅露っ」

「……っ」


ここで引いたら二度目は当分無い気がする。


紅露の腕を掴んで時間にしたら数秒。


沈黙が流れる。


「紅露…私はっ…」

「リリナーア、それ以上言うならリリナーアの気持ち無視して進むよ?」


私の気持ち無視して進む……?


「紅露…いいよ…」

「リリナーア…」


私の全て捧げても良いと思った男の人。


殿下に捧げるはずだった私の初めてを紅露に捧げても良いなんて考えに至るなんて本当に人生って分からない。


紅露が私の名前を言ってからその先黙ってる。


「私が…嫌いに…なった?」


私が嫌いになったならなったで良いよ。


その代わり私は紅露を忘れないから。


「な訳無いだろ!!」

「なら…」


紅露が私の手を握って片手でテーブルを退かして紅露と私の間に何もなくなる。


「リリナーア」

「…今更だけど緊張するからさぁ!早く!」


緊張と顔から火が噴き出しそうになってる目を瞑ってる私を見てる紅露のクスクスと笑い声が聴こえる。


「笑わないでっ!」

「だってさぁー…嬉しいんだよ」


紅露が私の腕を引き寄せて紅露の腕の中にスッポリ入り込んでしまう私の体。


「リリナーアが俺を嫌いになるかと思ったから」

「なんで私が紅露を嫌いになるの?そんな理由一つも見当たらない。嫌いになるなら私の方よ?」

「リリナーアを嫌いになる?それこそあり得ない話だね」


互いに見つめ合って互いに言いたい事を言ったからスッキリした。


「私達はまだまだお互いを知る時間が必要だね…」

「…そうだな。でも、これだけは言える」

「えっ?」


言葉を続けようと思ったら紅露の顔が近くに来て私は目を開けたまま唇にキスをされた。


何が起きたか分からないけど言える事はただ一つ。


私は紅露にキスをされた事実だけ。


「俺とリリナーアは恋人同士・・・・って事」

「……っ」



慌てて紅露から顔を背けたら紅露の手が私の頬を触るから体が固まった。


「リリナーア、緊張しすぎっ」

「……笑いすぎだからっ」


なんて言葉を言って良いか分からない。


紅露の発する言葉にどうにか答えるのがやっと。


「可愛い。リリナーア」

「可愛くないよっ。そう見えるのは紅露だけよ?」

「その顔は他の男に見せるなよ?」


グイッと顎を掴まれて再びキスをされた。


また目を開けたまま受け入れた私。


「まっ…てっ…紅…」

「待てない」


力強い紅露のキス。


私以外にもこんなキスしたんだよね…?

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