34・初めてお邪魔します。

第34話

「アイツに最後の最後まで邪魔された」

「…そうだね」


茜さんにあの後茜さんが曲がる道まで邪魔されました。


「霞…リリナーアは残念だと思っていいのか?」

「えっ?」


急に話を振られてドキッとした。

「…それはっ……」


ゴニョモニョ口の中に言葉を入れて下を向いたら紅露が私の顎をグイッと上げると紅露と視線が絡み合う。


「リリナーアをもっと独り占めしたい」

「…私だって…独り占めしたいよ?」


婚前前にアッチ方面はご法度だけど口づけなら紅露としたい…って何を考えてるのかしら?


私……あっー…ダメだ!紅露の側に居たらこんな気持ち知られちゃう。


「じゃあ、紅露。私…」

「逃がさないよ?リリナーア」


ガッチリと手をいつの間にか握られていて紅露の家の玄関に向かう。


「リリナーア、さっきの続き。俺の気持ち応えてくれるよね?」

「えっ……」


ニッコリと有無を言わさない紅露の笑顔に固まった。


女は度胸で行くべきなの?


私……こんな事初めてだから優しくして欲しいなぁー…と感じるんだけど…。


不安と期待が入り混じって紅露の手をギュッと握った。


私は下を向いていたから紅露の顔は分からなかったけど紅露が優しい眼差しで笑っていたのは気付かなかった。


「リリナーア、緊張しすぎ。取って食わないよ」

「緊張するよ〜!紅露の部屋初めてなんだよ?」


リリナーアになってから私は紅露の部屋に初めて入る。


「そっか。ようこそ。我が家へ」


ガチャと扉を開けてくれた瞬間に森林にいる様な空気に包まれた。


「いい匂い」

「あぁ。母さんチョイスだよ」


手を繋ぎながら玄関からすぐの階段を上がっていく時に紅露が声を出した。


「母さん、ただいまー」

「おかえり‥紅っ…霞ちゃん。いらっしゃい」

「おばさま、こんにちは。お邪魔します」


見知ったかの様に振る舞う。


「後でお菓子持って行きなよ。紅露」

「後で取りに行く」


おばさまは、部屋に吸い込まれて行って私達は無言で二階を上がっていく。


「ここだよ。あんまり期待すんなよ?」

「紅露の部屋だもん。期待しちゃうよ」


扉の前で笑って紅露に笑顔を向けたら紅露が顔を隠して何か言ったけど聞こえなかった。


「紅露?何か言った?」

「…何も言ってない…」


何故か溜息を吐きながら扉を開けてくれて紅露の休める場所を目一杯視界に入れ込んだ。


紅露の匂いが満載していて落ち着かない。


ドキドキしながらゆっくり座った。


「母さんに言われたから菓子持って来る」

「あっ、うん」


紅露の部屋、落ち着かないよーっ…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る