23・不意に呼んでしまった
第23話
お昼休憩が終わったから次は体育の時間。
何をするの?と不思議に思っていた…
「はい、ワン、ツー、ワン、ツー、スリー」
先生らしき人が手拍子を叩きそれに合わせて踊っていく。
この日本にも舞踏会があるんだね…?
「はい、ワン、ツー…ターン」
私は、見知らぬ男性と踊っている。
「十夜さん、上手いね」
「ありがとう」
社交辞令だから笑顔で受け取った。
舞踏会は苦手なんだけど社交マナーとして成人した身として殿下の
「……!!」
視界に紅露さんが映り茜さんと踊っていた。
次のダンス相手は紅露さんになれるのだろうかと…考えていた。
「って聞いてる?十夜さん」
「あっ、ごめんなさい。何かしら?」
相手の男性が何かを話しかけていたらしいけど聞いてなくて謝った。
「今度、俺とー」
「はい、次俺とだよ?」
「!!」
後ろから声が聞こえたと思ったらもう後ろから抱きしめられていた。
「紅露!?」
「はい、キミは茜とだよ?」
私と踊っていた男性はガッカリした感じで茜さんの方に向かう。
「紅露、いつの間にいたの?」
「曲が終わって速攻。霞の相手は俺だけ」
向き合って紅露さんの手が私の腰に添えられもう片方はお互い握りしめる。
〈リリナーアの踊り見てみたいな〉
「!?」
ここで、
「紅露、私踊りは苦手なの」
「王妃教育していたのに?」
「壊滅的な運動音痴なんですよ。足踏まれても知らないからね?」
「何回でもどうぞ」
会話が終わった時点で先生がまた曲を流し始めた。
「今度はワルツよ。さっきの事も視野に入れて踊ってね」
曲が流れる。
三拍子の優雅な踊りはよく舞踏会で殿下と踊った。
「殿下…じゃなかった!!紅露」
「殿下を思い出していたの?」
「えっ?」
下手な言い訳は紅露さんの前だと見透かされてると思い正直に頷いた。
「殿下と何?踊っていたの?」
「…はい。よく殿下と踊っていました」
この今流れてる曲は殿下と繰り返し踊っていた曲。
「じゃあ、記憶塗り替えて俺とこれから踊るにしようね」
「…はい…」
これも素直に返事した。
「はーい!みんな上手だったよー!」
先生の声がかかって紅露さんと離れた。
「霞、また後でね」
「うん…」
殿下の名前を出してしまった…。
十夜霞の仮面を被らないといけないのにフッとした瞬間に剥がれて無意識に殿下の名前を呼んでしまう。
染み付いた癖が抜けない。
それだとダメって分かってるのに…もどかしい…
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