17・どちらの男性も素敵だね

第17話

あれから二人で街中を楽しんで夕方になったから帰って来た。


「朝迎えに行く」

「うん。待ってる」


私の家の外の玄関の前で話していた。


紅露さんは隣の家なのだけど私が家に入るまで家に帰らない。


「今日はゆっくり休めよ」

「紅露も、ゆっくり休んでね」


今思う気持ちは紅露さんと離れたくない。


でも、その気持ちを言って紅露さんを困らせたくないから笑って手を振る。


「じゃあ、紅露。早くお家に入ってね」

「霞もな。お前が入らないと俺も家に帰れない」


茶化しながら紅露さんは伝える。


「はいはい。入りますよーだ」

「おやすみ。リリナーア」


玄関のドアノブに手をかけて回し紅露さんも見たら手を振っていた。


「おやすみなさい。紅露」

「あぁ」


玄関が開いて背中で紅露の存在を感じ入っていく。


鍵を閉めて玄関ドアに寄りかかった。


「今別れたばかりなのに会いたいって思うのは…」


ブブッと携帯が震えたので見たら紅露さんの表示。


{楽しかったな。明日からもよろしく。リリナーア…になるの焦らなくていいよ}


本当に優しい男性。


私の心を中心に優しく砕いてくれる男性を見た事ない。


殿下だって…だって……?


「霞?帰って来てるなら早く手を洗って夕飯の支度手伝って」

「はーい」


お母様が玄関まで来て私を引き戻した。


{楽しかったです。はい、明日からもよろしくお願いします。…ありがとうございます}


紅露さんに差し障りのない返信を打って夕飯の支度に向かった。


手伝いはまだ慣れずに四苦八苦しながらお母様の指示を忠実に守って夕飯を食べ部屋に戻った。


携帯を机に置き通学鞄を視界に入れ明日の支度をする。


時間割を見て鞄を元に戻してお風呂の支度を終えてお風呂に向かう時に部屋の鏡に自分が映る。


「…私はどちらの男性も素敵ね?」


鏡の中の自分に問いかけた。


どうしても二人を重ねて見てしまう。


「殿下は殿下。紅露は紅露って言ったのに…」


コツンと額をあてる。


「殿下を助け出すと思いながら紅露と出かけてその時間が終わってほしく無かったなんて…殿下の時もそう思った事あるのにね…」


どちらかを無意識に天秤にかけてる自分がいて嫌になる。


「紅露も殿下も素敵すぎて私はどちらを選んでるの?これからどちらを選ぶの?」


心の天秤は片方の男性に傾いてる。


でも、その男性は私じゃない女性を好んでる。


{焦らなくていいよ。リリナーア}

「!!」


フワッと聞こえて来た声に心が軽くなる。


笑顔を守りたい…って思ったんだよね。

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