15・偽装恋愛として…

第15話

「グッジョブだったよ!霞」


親指を立て私に向けて満面の笑顔で伝える。


この満面の笑顔を、独り占めしたい…と願ってる自分が居て戸惑ってる。


紅露さんがそのまま説明してくれた。


「…田内茜たうちあかね。俺らの同級生で同じクラス」

「田内茜さん。覚えた!あんな感じで接していけば良いのね?」

「うん!適当にあしらっておけば良いよ」


その後も行く所行く所茜さんと出会い一旦休憩に入った。


「あいつは化け物か!?なんでこう邪魔が入る?」

「凄い嗅覚で、犬みたい…」


紅茶を頂きながら答えたら頷く紅露さん。


「さっき茜に言われた言葉覚えてる?」

「茜さんにですか?」

「そう」


茜さんに言われた言葉…。


〔アンタ、本当に紅露の彼女?〕

〔紅露に似合わないのよ!寄生虫〕

〔紅露は私の彼氏だったんだから!返しなさいよ!〕


こんな所かしら?と伝えると紅露さんは笑った。


「よく覚えてるね。俺なんて一番最初しか覚えてなかったよ」

「言われた事は覚えてます。社交界でも噂話が好きな女性は沢山居ましたから」


社交界でも私は恰好かっこう餌食えじきだったからアンテナはよく張っていた。


「今は、霞でなくリリナーアだから俺の彼女じゃない事を見破られてる」

「えっ?茜さんにですか?」

「そう!それだけじゃない。学校行ったら俺達喧嘩別れしたと言われるかもしれない」


喧嘩別れ?


と紅露さんが?


「私、どうすれば紅露さんの彼女になれますか?」


この時、形振なりふり構ってられなかった。


どうしたら紅露さんの彼女に…本当の彼女の位置に立てれるか…。


「俺と偽装恋愛・・・・しょ?」

偽装恋愛・・・・?」


偽装…人々を欺くという形を取るっていう事?


「リリナーアは、ロイアン殿下が好きでしょ?」

「…っ…はい」


直ぐに答えられなかった。


そうだ…私は殿下の為だけに生きて来た。


本来の目的を失う所だった。


紅露さんは私ではなく霞さん本来を今だに好いてる。


「俺と偽装恋愛して、リリナーアが……」

「はい……」


偽装恋愛って言葉が重く重くのしかかる。


甘い甘い蜜に引き寄せられた蝶のように提案に頷く。


殿下でなくこの男性の心が欲しいと思うなんて。


「本当?よろしくね。霞」

「はい。紅露さん」

「紅露だよ?霞」


恋人同士になったのだから呼び捨てにしなくてはいけないのは気恥ずかしいけどこれも演技・・


「…紅露…」

「何?霞」


手を差し伸べられて頬を触られて顔が赤くなる。


「可愛い。霞」

「揶揄わないで下さいっ」


急に甘い紅露さん登場して私タジタジですっ。


私の心臓持つかな…。

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