11・両親の顔は…
第11話
「リリナーア、名前を言うよ」
「はい」
私の名前では無い名前が今から呼ばれるけど私は返事が出来るか…。
「十夜…霞」
「はい!!」
「
紅露さんが笑って私の両肩をポンポン叩く。
十夜霞として生きていくなら紅露さんのスキンシップも慣れていかないといけない。
「リリナーア?どうかした?」
下を向いていたら紅露さんに顔を覗かれて慌てて頭を上げた。
「何でもないですよ。」
「難しいけど頑張ってみよう」
「ひゃい…じゃなかったはい」
「ひゃいって…リリナーア面白すぎる」
ちゃんと返事しようとしたのに言葉が変に出て来てしまったけども紅露さんを笑わせれたのだから
紅露さんをこれから先も笑わせたい。
霞さんの代わりだけど紅露さんには笑って欲しいと願う。
「お腹空いたね。昼食作るから下に降りよう」
「もう作ってあるの?」
紅露さんが立ち上がって手を伸ばして来たから手を乗っけて立ち上がりながら聞いた。
「リリナーア、ここは日本で俺達は庶民。自分で作るんだよ。金出せば作ってくれるけどそんな毎日だったら破産するね」
紅露さんは苦笑いしながら一緒に下に降りた。
「そうなんだ。朝食はあの女性が作ったって事ですか?」
「そうだよ。霞のおじさんもつくるけどおばさんが主に作るよ」
お父様も作るの凄い…と感心していたら紅露さんに聞かれた。
「リリナーアの両親は?どんな人達?」
「私の?私の両親は…」
思い出そうとしたのに思い出せない。
私を育てて来てくれた両親の顔が浮かばないなんて…。
声は覚えてるのに顔が浮かばないなんて。
思い出そうとすると記憶がグニャリと歪む。
「どうかしたの?リリナーア」
「…優しい両親です」
慌てて繕った私の嘘は見破られてるか分からないけど紅露さんは頷いただけだった。
「紅露さん?」
「何食べたい?」
私に向かって明るい笑顔を出してくれて私も作り笑いで答えてしまった。
「オムレツが食べたい」
「オムレツ?後は?」
それ以上は食べたくなくて黙って首を横に振った。
「じゃあ、俺のお任せでいいな」
「…はい」
今は紅露さんが作ってくれる料理を楽しみにしたい。
「あまり難しく考えるなよ。リリナーア」
「……はいっ」
見抜かれていたなんてまだまだね…私。
紅露さんにこれ以上心配もさせたく無い…なんて考えてるなんて。
「紅露さん、お任せ楽しみです」
「任せておけ!」
今度は作り笑いでなく心から笑った。
今は両親の事は深く考えたくなくて。
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