10・紅露との約束事
第10話
「霞?霞?」
紅露さんと写真を見ていたら女性の名前を呼ぶ声が聞こえる。
「リリナーア!返事っ」
「あっ!はい!」
紅露さんに言われて慌てて返事をしたら扉が開いて先程の女性の顔が覗き込む。
「霞。麗と出かけてくるから昼食適当に食べて」
「はい、行ってらしゃいませ。お母様」
「…紅露君、帰ってくるまで治しておいてね」
「あははっ…」
空笑いする紅露さんに申し訳なくなってくる。
この世界では私の存在は無い事になっている。
その事に心が挫けそうになっていたら紅露さんに呼ばれ紅露さんの黒い瞳を見る。
「リリナーア」
「はい」
「
「はい…」
私は
でも…
「…紅露さん」
「何?リリナーア」
「…まだ怖いです」
下を向いて服を握りしめる。
自分だけが怖いわけじゃないのに。
紅露さんだって愛する女性を私が奪ってしまってるのに親切に教えてくれてる。
「リリナーア、徐々に霞になっていけばいいんだよ」
「……」
優しく語りかけてくれるこの男性に応えたい。
この男性をこれ以上辛い思いさせたくないから覚悟を決める。
「紅露さん!私、十夜霞として生きていきます」
この男性をこれ以上悲しませたくない。
この日本で生きて行く為に私は十夜霞になろう。
「リリナーア、焦らずゆっくりやっていこう」
「…でも!」
自分に枷を付けないと想いが入り込まない。
紅露さんはわたしに笑って手を握って来てビックリしたけど払わず受け入れた。
「リリナーア、俺と約束しよう」
「約束?」
「この部屋から出たら十夜霞の仮面を被るんだ」
十夜霞の仮面…?
「この部屋はリリナーアとして生きれるけどそれ以外は十夜霞として生きる」
「……」
仮面を被る事に対して嫌な感じは無い。
ただこの胸に広がる小さな不安が広がるのはまだ数時間しか経ってないからだと思いたい。
「紅露さん。私、精一杯やらせて頂きます。よろしくお願いします」
「うん。俺とリリナーアは
何の事を言ってる?
「だから砕けた言葉使いよろしくね」
「あっ…はい!」
そう言う事ね…後知らない言葉を聞いた。
「同級生?」
「うん。明後日から学校だし不審がられる」
「学校?」
「あぁ」
また、知らない言葉が出てきて不安になる。
「学校と同級生って何ですか?」
「あぁ、教えるよ」
苦笑いした紅露さんに詳しく教えてもらった。
不安が更に広がってお腹が痛くなったのは言わない事にしよう。
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