4・不安でも寄り添ってくれる

第4話

「霞?紅露君来てるでしょ!まだ寝てるの?」


重い空気を破る元気な女性声が扉の向こうから聞こえて来た。


「霞?起きてるの?」

「おばさん!霞まだ寝てるから起こしてる最中」

「あらっ、紅露君。ごめんね〜!霞!いい加減になさ…」


扉が勢いよくまた開いて50代位の女性と目が合った。


「あらっ、霞。起きてるじゃないの」

「今、起きたんだよ!な、霞」


紅露さんから目配せされて返事を求められ訳の分からないまま黙って頷いた。


「いつまでパジャマ?早く着替えなさい。片付かないでしょ!」

「はい。今着替えますわ」


侍女かと思って答えたら女性が驚いた表情を出しそれを見た紅露さんが慌てた。


「どうかしたの?霞」

「おばさん!霞着替えるって!」

「そうね…?早くしなさいよ」


不思議そうに私を見た女性は部屋から出て行った。


「はぁっー…。驚いた…」

「ごめんなさい…」


謝らなきゃいけない気がしたから謝ったら紅露さんが私を見て笑った。


「霞…じゃなかった。リリナーア」

「はい」


私を呼びに来たから侍女よね?と思っていたら紅露さんが教えてくれた。


「今の女性は侍女?」

「侍女じゃないよ。霞…リリナーアのお母さんだよ。覚えておいて」


あの方が私のお母さん。


「とりあえず、着替えよう。服は俺が選ぶよ」

「はい、助かります。何に着替えて良いか分かりませんでしたから」


着替えろ…と言われても分からないから決めてくれる事は有り難い。


「コレとコレ」


ベットに置いてくれた服が不思議で仕方ない。


「…これが洋服なのですか?」

「そう。上着と下に履くパンツ」


少し震えている手で恐る恐る掴み取り前後見る。


「薄い洋服初めてです」

「とりあえず今日はソレに着替えよう」

「はい…」


ベットに置いてある服に視線を移す。


本当に知らない国に来たのだと…感じる。


「リリナーア?どうかした?」

「えっ?あっ…。なんでも…ないです…」


いつの間にか涙が頬に伝わっていた。


「知らない土地に来て不安だよね。泣いたって良いよ」


紅露さんが泣いてる私の頭を優しく撫でてくれた。


殿下以外の男性に触らせるのを受け入れてしまった。


「これからの不安も心配も俺が受け止めるから」

「紅露さん…」


ロイアン殿下みたいに優しく暖かい手。


「ありがとうございます」


私の気持ちに寄り添ってくれる紅露さんを拒否なんて出来る訳が無い。


紅露さんだって辛いはずなのに…それでも私に優しくしてくれる。


「紅露さん、ありがとうございます」


もう一度伝えた。

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