3・自己紹介

第3話

「ちょっと待って!一旦ストップ」


男性が私の目の前に手を差し出した。


「霞…いや、リリナーアで良かった?」

「はい…」


自分の名前を呼ばれて返事をした。


「…霞の姿をしてるけど…霞じゃないって事?」

「はい。申し訳ありませんが霞さんという女性ではありません」


男性は腕を組んで頭を下げて無言になった。


沈黙がこの部屋に流れる。


「…一旦座ろうか」

「はい」


男性が頭を上げて私と目を合わせ座る事を促してくれて男性と対面に床に座る。


「ねぇ、霞じゃないならリリナーアは何処から来たの?誰?」

「私は、サンブリナ国の公爵令嬢です。ロイアン殿下の妃候補として生きて来ました」

「!?」


私の説明に男性は驚いた顔をして口を手で塞いだ。


「今時そんな設定みたいな事ある??」

「?そんなにビックリする事ですか?」

「うん!ゲームとか漫画みたいな話だよ!」


今度は目をキラキラしながら聞いて来た。


「…私はなんて貴方をなんてお呼びすれば良いですか?」


この男性の名前を聞いてない事に気付いて聞いた。


「そっか!まだ会って間もないのにリリナーアは自己紹介してくれたのに俺はまだだったね」

「はい」


そう言って自己紹介をしてくれた。


いかるか紅露こうろ。17歳。高校2年生。の幼馴染でもあるよ」


今の状況を…自分が何故霞さんになったのか分からないけど聞いてみたくなった。


「…霞さんとはどの様な女性なのですか?」

「…名前は十夜霞とおやかすみ。俺と同じ歳で俺の彼女だよ」


自己紹介してくれたけど最後寂しそうに笑った。


「申し訳ありません。貴方の大事な女性に…」

「俺も今の時点では追いついてないけど大丈夫だよ」

「……っ」


大丈夫…その言葉が私の心臓にグサっと刺さる。


「…紅露さん?聞いても宜しいでしょうか?」

「どうかした?リリナーア」


私は、紅露さんの顔を見て聞いて見た。


「ここは何処なんでしょうか?」

「ここ?日本だよ」

「日本…?聞いた事ない名前です」

「でも、流暢に日本語話すよね」

「!?」


そう言えば最初からこの男性の言葉が聞き取れていた。


聞いた事無い言葉は分からないのに…どうして分かったの?


「生まれて日本に来た事は無いですわ」

「やっぱり漫画とかゲームみたいな感じだね」


紅露さんが手を伸ばして私の頬を触ろうとしたから触らせない様に避けた。


「リリナーア?」

「私は殿下のモノでむやみに異性に触れるモノではありません」

「そっか…。霞なのに中身は霞じゃないんだもんね」


寂しそうに笑う紅露さんに心が痛んだ。

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