礼竜の章 4,【誓い】
第99話
礼竜の章 4,【誓い】
エルベット王城の王族私有区域は、主に三つに分かれている。
独身王族の邸が、男女分かれて一棟ずつ。
そして今回礼竜が雪鈴と共に入った家族棟である。
家族棟は通常親子や夫婦が入るもので、婚約関係では独身棟のままが普通だ。
まして礼竜はまだ十四になったばかりだ。エルベットでは十八歳で成人となり結婚が許され、十六歳が準成人扱いで婚約が正式に認められる。
雪鈴の身寄りがないために準王族扱いとして独身王族棟のエリシア邸に住まわせ、礼竜も独身王族棟に一人で住み、互いに行き来して会う。それが当初の予定だった。
だが、雪鈴が襲撃されたことで状況が一変した。経過は歓迎できないが、礼竜は今まで通り雪鈴と同居できることになったのだ。
正式な婚約や結婚は、規定の年齢にならないと無理だろうが。
そもそも、奴隷出身の雪鈴を議会や神殿が認めてくれるかということも不安だった。
祖父と兄が、礼竜の遺伝子疾患を盾に頑張ってくれたとは聞いていたが……。こうもすんなり通って肩透かしを食らった気分だ。
なんでも、神殿が率先し雪鈴を推し、他を説得したらしい。何か良い神託でも出たのだろうかと思うが神殿からは何の言葉もない。
ともあれ、今差し迫った課題は別にあった。
王族私有区間の一番奥に行き、封印された扉を辺りに人がいないのを確認して開ける。
中で待っていたのは、魔国からついてきた兄の医者だ。
「やっぱ来たか。
まあゆっくり……できないわな」
先に来て措置を受け終わったところだろう。疲れた様子の兄が手を振ってくれた。
「顔青いぞ?
お前、すぐ顔に出るからな……」
兄のような快活な肌なら、こうまで悟られることはなかっただろう。
そんなどうしようもない無いものねだりがつい頭を過る。
「雪鈴に怪しまれたら終わりだしな。
さっさと済ませちまえ」
頷き、医者に従って防音された処置室に向かう。
雪鈴をはじめ――魔国の血を引かない者には、決して見られたくなかった。
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