礼竜の章 3,アマリリスの紋

第92話

礼竜の章 3,アマリリスの紋



 魔国では秋の盛りという時期だが、寒いことで有名なエルベットは既に冬だった。

 だが、室内では魔国のような軽装でいい。これでもかというほど暖められているからだ。


 礼竜は晩餐会に出席するため、義兄と共に向かってしまった。「食べないで帰るから、晩御飯お願いね!」という笑顔を残して。


 雪鈴は王族占有区画の家族棟、ファムータル邸にて、新しい厨房の使い方をメリナに習っていた。


 使用人たちは魔国に居た時と同じ顔ぶれが仕えてくれている。メリナに言わせれば、「前王陛下の元、超特急で先回り致しました!」とのことで、雪鈴襲撃事件までゆっくりパレードをしている間に前王の魔力を使って戻ってきていたらしい。


 使用人たちは皆、エルベットから魔国に派遣されていた人間で、彼らにとってもここが故郷となる。


 それより大変だったのが、急遽家族棟での同居となり、分けて準備していた荷物を短時間で運びこみ配置する作業だったそうだ。


 厨房は多少勝手は違うが、慣れれば大して変わらなさそうだ。

「おすすめの食材とかある?」

「あります! 雪に埋めて縮ませたほうれん草とか甘みがあってお勧めでございます!

 他にも他国に輸出もしている特産のジャガイモがございまして……」

 ならそれをメインにと、メニューを考えるのも楽しかった。



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