第82話

丁鳩ていきゅうに裏拳を食らった鼻を抑え、ライオルは言う。

「お荷物はあとで行きますので、先に山を越えてください……。

 国王陛下が……仰せです……」


「山……」

 雪鈴は言って見上げる。

「……この山……」

 

 雪に覆われた、断崖だ。

 加えて、やってきた騎士団は重装備だが、こちらは軽く外に出るような馬車で来ている。


 確かに……国を出るのが急に決まって、成り行きで来たのに近い。


「大丈夫です! 雪鈴妃!

 ちゃんと鳥から聞いていますよ!


 ――風成かざなり


 歴代王族でも使えた記録が殆ど残っていないんです!

 殿下、早く早く!」


「お前は置いてくが……な!」

 今度は拳骨を入れる丁鳩。

「こいつ丈夫だから殴り甲斐があるなぁ……」


 ライオルの意識が薄いうちに……と、礼竜は力を使った。



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