「……うーん……」

　結界ギリギリまで近づいて中を覗き込む。

　荒れ果てた元王宮は、いつもと変わらず静かで――そして禍々しい。

「……ファムータル殿下……そろそろお引き取りを」

「……すまない」

　衛兵が見兼ねてかけてきた声に【公人】の顔でそう返し、エリシア邸に足を向ける。

　――兄様、何の調査をしてたんだろう？

　だが、この時。

　銀髪を靡かせてエリシア邸に入る姿を見詰める【眼】があったなど、誰も気づきはしなかった。

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