第65話

「よしよし……。


 欲しいんだな? 雪鈴が」


 毛布を被せ、そう声をかけて頭を撫でると、糸が切れたように弟は泣き始める。


 気が付いた時には雪鈴の寝間着を破り、押し倒そうとしていたらしい。

 雪鈴も抵抗してはくれなかったそうだ。


 ――まあ、雪鈴も……欲しいだろうな……。


「やだ……死なせたくない……殺したく……ない……」


「分かってる。分かってるから……」


 この痛みは、自分たち兄弟以外に理解してもらえない。

 二人で分け合うしかない。


 傷の舐め合いだとしても……


「僕に……子どもができないようにしてください……」

 

 丁鳩もそれを望んだことがある。


 しかし、ファムータルにそれは叶わない。

 味方の筈のエルベットでさえ、ファムータルの子を待っている。


「呪い……か。

 どこまで俺たちを苦しめるんだ……」

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